日本精神障害者リハビリテーション学会 第30回岡山大会

自主プログラム

【参加方法】
当日総合受付にて、各自主プログラムの整理券を配布させていただきます。
ご参加予定の方は、参加する自主プログラムの整理券をもってご参加下さい。
なお、整理券をお持ちでない方のご参加はご遠慮いただく場合がございます。あらかじめご容赦ください。
※企画内容は現時点(10/27)の内容となります。

自主プログラム1

12月2日(土)第3会場(2F 201会議室)10:00~11:30
「運動課題と認知課題の多重課題プログラムCognitive Activation Therapy (CAT)
~仲間と一緒に楽しみながら認知機能を活性化させよう!~」
企画者責任者:木納 潤一(医療法人鴻池会 秋津鴻池病院 リハビリテーション部)
企画内容
1.企画趣旨 
精神障害者リハビリテーションにおいて,認知機能リハビリテーションが注目されています.我々は,身体運動課題を取り入れたCognitive Activation Therapy(CAT)という新しい認知機能リハビリテーションプログラムを考案しました.CATは,集団で取り組むことができ,仲間同士で笑いあい,楽しみながら取り組む点が特徴です.CATは,ボールとお手玉を使った多重課題に取り組むことで,認知機能を活性化するプログラムです.これまでCATに参加した方の満足度は高く,楽しみながら取り組むことができています.今回,我々はCATを広く臨床現場で取り入れていただくことを目的として,学会参加者の皆様にCATを体験していただきたいと考え,企画しました.

2.CATって?
CATとは,統合失調症の方を対象にした認知機能を活性化するためのプログラムです.CATの目的は,統合失調症の方の神経認知・社会認知を改善し,社会生活能力を向上させることです.CATは,神経認知と社会認知の両方を活性化できるように,1)オリエンテーション,2)実施,3)振り返り,の順にプログラムを構成しています.頻度は週2回で,1回のセッションにつき40分間行います.CATの介入研究においては,3ヶ月間で計24回実施しています.CATでは,毎回必ず課題を一緒に行うパートナーを決めます.そのパートナーとコミュニケーションを取りながら多重課題に取り組むこととしています.
1)オリエンテーション(5分)では,CATの意義やルールの確認を行います.
2)実施(25分)では,ボールやお手玉を使った多重課題を実施します.CATの多重課題には4種目あり,まず投げる・キャッチするといった単純な基本動作に,手足の非対称な動きや足踏みなどを追加して段階的に動きを複雑にします.さらに“あるカテゴリーの単語”,“ある頭文字から始まる単語”を瞬間的に答えるといった認知課題を追加します.このように難易度を段階的に変化させることで多重課題を構成し,神経認知を活性化させます.そして,パートナーとコミュニケーションをとり合い,相手のペースに合わせながら,頭の混乱や失敗をあえて笑って楽しみながら取り組んでもらいます.
3)振り返り(10分)では,チェックシートを用い,パートナーとお互いの気分・達成度・満足度について振り返りを実施します.チェックシートに,多重課題を実施している間のパートナーの表情や行動から読み取った内容を記述します.パートナーをしっかり観察することで,社会認知を活性化させます.

 当日は,CATを開発した経緯やこれまでの研究実践についても報告します.また,ボールとお手玉を用いて,実際に体を動かしながらCATを体験していただきます.すぐに現場で取り入れられるような内容をお伝えできればと考えております.CATの内容を聞いてみたい方,デイケアや作業療法などの現場でCATを取り入れてみたい方,是非ともご参加ください.

自主プログラム2

12月2日(土)第4会場(2F 202会議室)10:00~11:30
「当事者もスタッフも、過ごすみんなで取り組める施設環境改善プログラム
~キレイになるだけちゃいまっせ!~」
企画者責任者:堀 雄一(社会福祉法人みつわ会)
企画内容
【企画趣旨】高齢者領域においては、これまでも環境改善に関する取り組みが積極的に行われてきた(PEAPに基づく認知症ケアのための施設環境づくり実践マニュアル、児玉桂子他編、中央法規出版、2010他)。人と環境のあり方について関心が高まる中、障害福祉分野でも「施設環境改善プログラム」に取り組む事業所が増えてきている。障害福祉分野の特徴は、高齢者領域とは異なり、サービスの受け手である障害当事者自身が「施設環境改善プログラム」に参加することである。そのことによって、環境とその効果に注目する視点が生まれ、環境に自ら働きかけるようになる、事業所への帰属意識が生まれる、自身の意見した内容で環境が変わることで自己効力感も高まるなどの変化がみられる。施設環境改善は、①環境への気づきを高める②環境課題をとらえる・目標を定める③計画を立案する④計画を実施する⑤新しい環境を生かす⑥環境づくりを振り返るの6つのステップから構成されている。またここでいう環境は「物理的環境」「運営的環境」「社会的環境」の3つを含むものとしてとらえている。このステップの中でも、特に②「環境課題をとらえる・目標を定める」において、参加者自身が環境課題を抽出するステップがある。様々な立場の参加者(利用者、職員、管理者、第三者など)が事業所内を歩き、気になるところをカメラで撮影し、キャプションカードを作成し、施設の環境の課題を共有し、課題に取り組み、その結果を共有するためのひとつの方法として用いられている。自主プログラムでは、事業所で展開されている具体的な活動内容について報告し、そのあと、参加者にも実際に②のステップを模擬的に体験できる場を設けたいと考えている。
【参加対象者】何らかのサービスにかかわっている方はどなたでも。
【内容】本研究は精神障害を主たる対象としている福祉サービス事業所で展開されているサービスの質に関する評価のひとつの新しい視点を提供するものであり、評価に利用者の参加を促すことによる主体性の向上、サービス全体の底上げに貢献できるものである。当日は、はじめに企画者より実践の過程を説明し、参加者にも実際に「施設環境改善プログラム」の模擬体験をしてもらう。

自主プログラム3

12月2日(土)第3会場(2F 201会議室)11:30~13:30
「CST-B(Communication Skills Training program with Blind experience for mental disorder)
~新しいコミュニケーション及び認知機能プログラム~」
企画者責任者:早川 佑治(医療法人香流会紘仁病院)
企画内容
【企画趣旨】精神障害者において,社会生活機能の回復を促進することが重要であり,社会生活機能の回復には,認知機能障害が影響しているとも言われている.また,精神障害者リハビリテーションにおいては,認知機能リハビリテーションが注目されている.ただ,コミュニケーション能力が実生活に悪影響を与える可能性があるとされており,認知機能と併せてコミュニケーション能力を向上させることが,社会生活機能を回復させるためには必要だと考えます.コミュニケーション能力の向上を主な目的とした,臨床現場で楽しく・集団で実施できるプログラムは少ない.そこで我々は,楽しくコミュニケーション能力・認知機能を向上させることができる可能性がある,CST-B(Communication Skills Training program with Blind experience for mental disorder)を考案しました.CST-Bは主にコミュニケーション能力の重視したプログラムになりますが,認知機能(注意機能・言語流暢性など)向上の可能性も含まれるので,認知機能リハビリテーションの一つと考えております.少人数から集団まで実施でき,楽しみながら取り組むことができると考えております.
【CST-Bとは】CST-Bは,視覚刺激を遮断することによって,より言語コミュニケーション能力を必要とする状況を体験することを通して,コミュニケーション能力改善及び人と人との繋がり(信頼関係)を経験するプログラムです.CST-Bの主な目的は,精神障害者のコミュニケーション能力を向上させることだが,併せて認知機能(注意機能・言語流暢性など)を改善し,社会生活機能を向上させることです.CST-Bのプログラムは,ブラインド体験を中心とした机上プログラム・軽運動プログラムを実施します.1回を60分とし,①オリエンテーション(10分)②実施(40分)③振り返り(10分)で構成されています.実施頻度は,週2回を3か月計24回実施します.①オリエンテーションでは,体調の確認,CST-Bの目的・効果・ルールの確認を行います.②実施では,視覚を遮断した環境を設定,音の出るボール,衝立やアイマスクを使用し,机上プログラム・軽運動プログラムを行います.失敗を楽しみながら,言語コミュニケーションを取り組んでもらいます.③振り返りでは,チェックシートを用いて,メンバーの感想・満足度等を共有してもらいます.
【参加対象者】CST-Bに興味・関心のある方,体験したい方どなたでも参加できます.体験をして頂くことになるため,身体を動かすことになります.ただ,軽めの運動なのでスーツ等でも実施可能です.当日は,企画者よりCST-Bの内容等の説明をした後,CST-Bを体験しこのプログラムを一緒に実践してもらいたいと考えています.参加お待ちしております.

自主プログラム4

12月2日(土)第4会場(2F 202会議室)11:30~13:30
「【ツッコミ歓迎】8050・孤立への処方箋!?”にも包括時代のアウトリーチ支援をともに考える~横浜市保土ケ谷区の実践から~」
企画者責任者:丹羽 真里(保土ケ谷区高齢・障害支援課)
企画内容
1 はじめに
 『精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(以下、にも包括)の構築』が言葉として登場して早7年。地域で暮らす全ての人が社会とつながりながら、その人らしい生活を送ることが目指されていますが、皆さんが暮らす地域、実践する地域ではどのように進められているでしょうか。
本企画では、横浜市保土ケ谷区(人口約20万人)の未治療・治療中断者へのアウトリーチ支援事業を材料に、地域課題への処方箋として期待されるアウトリーチ支援について、皆さんと考えていきたいと思います。参加者の皆さんに「これってどうなの?」「もっとこうした方がいいのでは?」と様々なご意見・ご感想をいただくことで、実践をブラッシュアップしたいと思っています!

2 報告内容
・保土ケ谷区福祉保健センターによるアウトリーチ支援事業の概要
保土ケ谷区では、精神保健福祉分野の事業所による自立支援協議会内の『精神net』が、令和2年度に『にも包括』の協議の場(当事者、家族も参加)として位置づけられた。そこでの事例検討の中から、精神科未治療・治療中断の状況にある方の支援に対する地域課題として“非自発”性、と“孤立”が確認された。そこで保土ケ谷区保健福祉センターでは、これらの課題に対応するための『にも包括』の取組として、精神netメンバーのネットワーク機能をベースとした、多種職チームによるアウトリーチ支援を事業化し、横浜市全区(人口約373万人)への展開を視野に試行的に実践している。 
・保土ケ谷区アウトリーチ支援 事例から見たプロセスと効果
アウトリーチ支援チームでの直接支援を行うスタッフ(行政SW 1名、訪問看護師1名)へのインタビューにより、終了に至った1事例の支援開始の経緯と支援プロセスを尋ね、行われた実際の支援、留意した点、利用者の変化などをまとめたものを共有する。そのうえで、効果的であった支援、その際意識した点などをその場でスタッフに語ってもらう。なおインタビューおよび本事例の利用は帝京平成大学の倫理委員会にて承認を得ており、本事例の当事者・家族には記録の利用について、匿名化し個人が特定される情報は利用しない旨を口頭にて説明し、同意を得た。
・未治療・治療中断者へのアウトリーチ支援における、本人家族アセスメント指標の試案
 保土ケ谷区アウトリーチ支援事業の成果を評価するためのツールとして、本人家族アセスメント指標を作成した。本指標は、「受診につながることだけがアウトリーチ支援のアウトカムではない」という視点に立ち、アウトリーチ支援においてポイントとなる3領域(①本人の状況、②家族の状況、③支援機関との関係)を捉えるものとした。本報告では、指標作成の経緯、指標の構成、評価の結果と課題について共有する。

3 参加対象・参加者に期待すること
 本企画に関心を持っていただいた方であればどなたでも参加歓迎です。ダイアロジカルなツッコミ空間をともに創造しましょう!

自主プログラム5

12月2日(土)第3会場(2F 201会議室)14:00~15:30
「メンタルヘルスの未来を描く!アクションプランを作成しよう!
―精神障害における社会的なスティグマの解消を目指して―」
企画者責任者:小沼 聖治(聖学院大学 心理福祉学部)
企画内容
【企画の背景】
日本ではコロナ禍における自殺やひきこもり、8050問題の増加等、多種多様なメンタルヘルス課題が山積している。しかし、このような状況は日本だけではなく、世界的な課題でもある。
WHO(世界保健機関)は、2021年に「メンタルヘルスアクションプラン2013–2020」を更新し、2030年までの延長計画を発表した。新たな指標や実施方法を盛り込みながら、当初の中心的な柱である①メンタルヘルスに関するより効果的なリーダーシップと政策、②地域に根ざしたメンタルヘルスおよびソーシャルケアサービスの提供、③メンタルヘルスの促進と予防のための戦略の実施、④情報システム・エビデンス・研究の強化という4つの目的は継続している。そのうえで、「メンタルヘルスアクションプラン2013-2030」では、すべての人のメンタルヘルスと福祉の促進や予防等を達成するために、具体的な行動を明確化している。
精神障害のスティグマ解消をはじめとした包括的なメンタルヘルス課題の解決に向けては、精神保健医療福祉制度・政策の改善や地域住民の価値変容を目指すソーシャルアクションが必要不可欠である。そして、具体的なアクションを促進するためには、十分に練られた行動計画の構想が必要となる。

【企画の目的】
そこで、任意団体TOMY'S ACTION CLUB(トミーズアクションクラブ)では、「アクションの第一歩を踏み出すために」(2021年度)、「アクションのためのチームづくり」(2022年度)に続く第3弾として、『アクションを促進するためのプラン作成』をテーマに設定した。
参加者との対話を通じて、①地域アセスメントと活動計画のポイントを共有し、②明日からのアクションにつながるプランを作成することが、本プログラムの目的である。

【企画の内容】
<趣旨説明・話題提供>(15分)
「地域アセスメントと活動計画作成のポイント―課題の明確化と目標の描き方―」
話題提供者:
聖学院大学 心理福祉学部 准教授(精神保健福祉士) 小沼 聖治(埼玉県)

<ワークショップ>(説明:10分、グループワーク:50分)
「想いを一つに!明日からの実践に向けたアクションプランを作成しよう!」
コーディネーター:
認定NPO法人侍学園スクオーラ・今人 作業療法士 坂本 将吏(沖縄県)
ファシリテーター:
医療法人常清会 相談支援事業所ドライブ 精神保健福祉士 白澤 珠理(鹿児島県)
SAGA-ACT さが恵比須メンタルくりにっく 精神科医 谷口 研一朗(佐賀県)
一般社団法人北海道ピアサポート協会 PEER+design ピアスタッフ(社会福祉士) 矢部 滋也(北海道)
聖学院大学 心理福祉学部 准教授(精神保健福祉士) 小沼 聖治(埼玉県)

<ディスカッション&クロージング>(15分)
各グループからの発表と企画者&参加者の意見交換

自主プログラム6

12月2日(土)第4会場(2F 202会議室)14:00~15:30
「リカバリー志向のツール パーソナル・メディスンを日本でも実践しよう!」
企画者責任者:坂本 明子(久留米大学 文学部社会福祉学科)
企画内容
パーソナル・メディスンは、10代で統合失調症と診断を受け、リカバリーを続けているパトリシア・ディーガン博士により開発されたリカバリー志向のツールです。自分の内にある知恵を見つけ、生活の中で自分ができることを自分で決めて行うセルフケアの方法です。ひとりひとりのパーソナル・メディスンは多種多様で、日常の小さなことから、普段楽しんでやっていること、さらには人生に意味や目的を与えてくれるものであったりします。例えば、朝、散歩をすると、頭がすっきりして、一日の準備ができます。サックスを吹くと、呼吸が整えられ、不安が軽減されます。さらに、怒りや不安、自傷行為など日常で困難に感じていることに焦点を絞ったパーソナル・メディスンもあります。いずれも多くの方の経験に基づいて考案されたものです。
パーソナル・メディスンは、アメリカ連邦保健省薬物依存精神保健サービス部(SAMHSA)のリカバリー志向の実践の基準を満たし、科学的根拠のある実践(EBP)として認められています。介入研究ではQOLの向上や活性化、自己管理の向上といった効果をあげています。
しかし、ツールの考案だけでは不十分でしたので、パット・ディーガン&アソシエイツでは、パーソナル・メディスンをサポートするケアモデルを開発しています。それが認定パーソナル・メディスン・コーチ(CPMC)です。CPMCは、一人ひとりがリカバリーするためにパーソナル・メディスンを自分で発見できるようサポートします。CPMCは世界各地で誕生し、パーソナル・メディスンの実践が展開されています。日本でも第1回目の認定パーソナル・メディスン・コーチの研修を行い、今後実践を重ねていこうとしているところです。
そこで、本自主企画では、第一に、パーソナル・メディスンについてご紹介し、参加いただく皆さんとともにパーソナル・メディスンへの理解を深めたいと思います。第二にパーソナル・メディスン・コーチの取り組みの経験を共有して、次につなげていきたいと思います。

自主プログラム7

12月2日(土)第3会場(2F 201会議室)15:45~17:15
「多職種アウトリーチチームにおける効果的なチームビルディング
~心理的安全性と成長支援対話~」
企画者責任者:鷹子 剛(一般社団法人Q-ACT)
企画内容
本自主プログラムは、多職種アウトリーチを実践例として、チームビルディングについて参加者と共に議論することを目的とする。具体的には、企画者の所属するQ-ACTのチームビルディングを話題提供の事例として、組織内における心理的安全性やチームスタッフ同士の対話の在り方をテーマに参加者と検討する予定である。
Q-ACTは2012年から県内初のACTチームとして活動を開始し、現在県内に4つのチームを運営している。ACTプログラムでは、多職種(超職種)によるチームアプローチが必要とされており、多職種で構成されるチームが職種を超えて、医療・福祉を含めた包括的な支援を提供する。多職種チームの中には、それぞれの専門性やこれまで培ってきた経験や価値観など、様々な意見や考え方が存在する。精神障がいを抱える方たちの地域生活を支えるためには、その様々な意見や考え方を集約し、支援を提供していかなければならない。その為には、組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な疑問、そして違和感の指摘が、いつでも誰もが気兼ねなく言えることが大切になる。Q-ACTでは立ち上げ当初からフラットな組織運営を目指しており、その理由としては、上下関係や地位の序列があると、どんな組織であっても率直な意見が出にくくなる傾向にあるからだ。多職種アウトリーチチームが効果的に機能するためには、専門性だけではなく、土台となる組織の仕組みや文化にも目を向ける必要がある。
フラットな組織運営を意識してきたとはいえ、立ち上げから10年以上が経過する中で、どうしても階層(ヒエラルキー)が生まれてしまうことがあった。その経験の中で、組織の中の階層というのは、上と下、どちらか一方に原因があるのではなく、お互いの姿勢が作用し合って作られていくものだと気付かされた。上が下を評価するのではなく、スタッフ全員が対等にフィードバックし合うという仕組みを作っていきたいと考えているときに、私たちの目指す組織の在り方に直結した「ティール組織」と「360度フィードバック」に出会った。
利用者のリカバリーを信じるならば、まずはチームスタッフがお互いの成長を信じ合う風土が必要であり、利用者と対等な関係性を築こうとするならば、まずはチーム内で対等な関係性を築いていく必要がある。組織の在り方やチーム内での対等な関係性は、組織やチーム内だけではなく、ひいては、支援を提供する利用者やご家族、関係機関との関係にまで良い影響を与えると実感している。
本プログラムで、多職種アウトリーチチームがチームワークを最大限に発揮するために必要な「心理的安全性」や「スタッフが相互に行う成長支援対話」などをキーワードに、効果的なチームビルディングについて皆さんと一緒に考え、学び合う機会としたい。

プログラム(予定)
①Q-ACTの取り組みの紹介 15分
②心理的安全性についてグループワーク 30分
③成長支援対話のデモンストレーション 15分
④チームビルディングについてグループワーク 30分

自主プログラム8

12月2日(土)第4会場(2F 202会議室)15:45~17:15
「長期在院者に関わる技術がこれからの精神科医療を変えていく」
企画者責任者:工藤 由佳(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)
企画内容
長期にわたって精神科病棟に入院している人たちに対して、再び地域で生活するために支援するのは、実に大切な介入の一つである。その実現に必要なアウトリーチなどの様々な技術は、急性期医療でもとても役立つ。だから、長期在院者に関わる一人ひとりが技術を身につけ、自信を持って取り組んでいこう。これがこの自主プログラムのねらいである。
 実際の支援場面では、本人の意思が曖昧に見えて援助の方向がうまく定まらず、支援者も迷ってやりがいを見出しにくくなることがある。これには、病院の規範のなかで長年生活してきたために、本人自身の規範つまり自律性が弱まっていることが関係している。
このシンポジウムの企画者たちは、精リハ学会第29回学術集会(2022年12月)で研修セミナー「退院できない理由を探すのはもうやめよう~長期在院者の退院支援の政策と実践」を行った。その後、長期在院者の回復・退院支援につき話し合いを重ねたところ、
1)当事者が、自分の思いを言えるようにすること
2)スタッフが、当事者が思いを打ち明けられるような関わりをすること
が重要だと考えた。これらと冒頭に述べたねらいを基に、今回のシンポジウムでは、まず長期在院者の支援に関わってきた発表者が経験と知識を発表する。この話題提供を手掛かりとして、参加者同士でも経験を共有することが目的である。また、参加者それぞれが学びを実践し、それがまた周囲に広がり、長期在院者の支援者が周囲と力を合わせて生き生きと働き続けられることを目指している。
植田俊幸(鳥取県立精神保健福祉センター・鳥取医療センター精神科)
積極的訪問チームで経験した、職員に必要な心理的ソーシャルワーク的スキル
樽谷精一郎(新阿武山病院)
慢性期病棟から病院を元気にする会の企画と実践:どうすればスタッフのモチベーションを高めて維持できるか
工藤由佳(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)
長期入院患者が今後どこで生活するかを決める意思決定支援ガイドの開発:どうすれば精神医療で意思決定支援を実装できるか

自主プログラム9

12月2日(土)第3会場(2F 201会議室)17:30~19:00
「実践から共に生み出される新たな「価値」とは:精神保健福祉分野での活動の取材や、ヒューマンライブラリーなどの活動から考える」
企画者責任者:千葉 理恵(京都大学大学院 医学研究科 精神看護学分野)
企画内容
【はじめに】
「価値がある」という言葉は、大切だと思うことや意義があると考えることに用いられます。今まで意識していなかったことの中にある「価値」に気づくことは、これまであたり前だと思っていた精神保健福祉サービスのあり方を見直すことや、新しい可能性をもたらすことにつながるかもしれません。また、価値観が異なると思っていた人たちや分野とつながることで、人々の価値観が変わったり、そこに新たな価値がうまれたりすることも、これからの時代のサービスを創り出すことにつながっていくかもしれません。私たちは、それぞれの立場から、精神保健福祉分野の実践や活動によって共に生み出されていく、新たな価値に関心をもち、本自主プログラムを企画しました。

【目的】
この自主プログラムの目的は、精神保健福祉分野の様々な実践やユニークな活動を通して、人と人とのつながりの中で、新たな「価値」にどのように気づき、どのようにして共に生み出されるかについて、これまでの取材経験に基づく話題提供や、「ヒューマンライブラリー」、「リカバリーカレッジ」の活動の紹介などをまじえながら、参加者の皆様とともに、意見交換を通して考えることです。

【内容】(順番は変更する場合があります)
〇導入、企画者の紹介
〇リカバリー支援の体験者:リカバリーの過程を体験しながら新たな価値に気づく
 人と人との関係性の変化がもたらすもの
〇リカバリー支援の実践者:実践しながら新たな価値に気づく
 語り×市民=?
〇リカバリー支援の発掘者:取材しながら新たな価値に気づく
 精神福祉サービス×異分野=?
〇リカバリー支援の研究者:研究しながら新たな価値に気づく
〇それぞれの気づきとつながりによって共に生み出される価値、それを社会に発信していくことの価値
〇意見交換とまとめ

【倫理的配慮・利益相反】
この自主プログラム内で話し合われる内容は守秘義務をともなうものとし、参加者の個人情報ならびにプライバシーの保護に十分留意します。また、企画者らは、自主プログラム自体が安全な場として機能するように十分配慮して進行を行います。開示すべき利益相反はありません。

ご関心をおもちの皆様のご参加をお待ちしています。
本自主プログラムの発表内容の一部は、JSPS科研費(23K01865, 19K10923, 23H03196)の助成を受けています。

自主プログラム10

12月2日(土)第4会場(2F 202会議室)17:30~19:00
「精神障害者のウェルビーイングな働き方を考える - 企業が求める人財-」
企画者責任者:小林 隆司(兵庫医療大学 リハビリテーション学部 作業療法学科)
企画内容
1. 企画趣旨
2013年の改正障害者雇用促進法により、2018年4月1日(施行日)から、障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わり5年が経過した。リーマンショック以降、労働人口の減少に伴う人手不足や、精神障害者保健福祉手帳保持者の増加により、就職件数は右肩上がりで急増している。その一方で、精神障害者の1年後の職場定着率は49.3%と低いことが課題とされている1)。
2024年4月から、障害特性により長時間の勤務が困難な障害者の方の雇用機会の拡大を図る観点から、特に短い時間(週所定労働時間が10時間以上20時間未満)で働く精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者を雇用した場合、特例的な取扱いとして実雇用率上、1人をもって0.5人と算定することになった2)。企業へ目を転じると、障害者の雇用の促進等に関する法律の改正により、「雇用の質のための事業主の責務の明確化」が示され、事業主の責務として適当な雇用の場の提供、適正な雇用管理等に加え、職業能力の開発及び向上に関する措置が含まれることが明文化された。その流れを受けて企業支援においては、自社における障害者雇用の位置づけと障害のある人のキャリア形成や戦力化にむけての助言、そして企業からは支援機関への期待や企業が求める人物像が語られるようになってきている。
そこで今後の制度改正は、企業就労をめざす当事者や支援者へどのような影響を与えていくのか。また医療、福祉、労働という各機関の役割と立場を尊重した当事者への支援の捉え方について検討していくことが喫緊の課題であると考えた。

2. 企画の目的
本シンポジウムの就労支援とは、一般企業(福祉的就労及び特例子会社を除く)と定義する。前半は、2023年に企業及び障害のある就業者に対して行われた精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査結果3)と、中小企業のコンサルティングや定着支援の経験を有する実践者が見えている企業が求めている人財について話題提供を行う。後半は、社会で活躍できる障害者支援人財の育成を行う指定討論者、自閉スペクトラム症の特性と双極性障害の疾病をもつ当事者、そして来場者と共に精神障害者の「ウェルビーイングな働き方」について議論を深めたい。

【参加対象者】
企業就労に関心がある当事者やご家族、支援者、研究者、どなたでもご参加頂けます。

【引用文献】
1) 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター(2017).「障害者の就業状況等に関する調査研究」
2)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00019.html <2023. 8.26閲覧>
3)パーソル総合研究所. https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/seishin-koyou.html <2023. 8.26閲覧>

自主プログラム11

12月3日(日)第3会場(2F 201会議室)9:00~10:30
「精神医療アドボケイトが果たす役割と期待  ~おかやまの未来を語る~」
企画者責任者:菅原 明美(美作大学 生活科学部 社会福祉学科)
企画内容
2022年12月に精神保健福祉法が改正され、その中で一つの改正点として、「入院者訪問支援事業の創設」が盛り込まれ、2024年4月1日から施行予定である。この入院者訪問支援事業は、都道府県等の任意事業として位置づけられ、市町村長同意による医療保護入院者等を対象に、外部との面会交流の機会を確保し、その権利擁護を図ることを目的としている。
この支援事業における訪問を担当するのが、訪問支援員(以下、アドボケイト)である。一定の研修を修了した者が、入院者の要望に応じて訪問。その者の話を誠実かつ熱心に聞くほか、入院中の生活に関する相談、必要な情報の提供する役割を果たす。
なお、ここでの「アドボケイト」の表現は、権利擁護、すなわち、アドボカシー活動を行う者という意味合いをもつ。そしてこのアドボカシーとは、「入院者の思いを代弁する」のではなく、「しっかり声を聞き、入院者自身が外部に発信できる」ことを目的としている。
この入院者訪問支援制度に至るまでには、障害者の権利条約に関する国際的な動向や、日本における長期入院者の地域移行や意思決定に関する調査研究が背景として挙げられる。その過程で、医療者とアドボケイトとの関係性についても繰り返し検討されてきた。
2024年から始まる入院者訪問支援事業では、アドボケイトは、原則として入院者との会話を医療者に報告することはなく、また精神保健福祉士や地域事業者の役割を代行することもない。ここで重要なのは、「独立型アドボカシー」の立場であり、サービス提供者から独立し、それ自体に利害関係がない状態を維持していることが求められている。
この「独立型アドボカシー」を尊重する形で、法改正の施行に先駆けて、2022年12月に一般社団法人おかやま精神医療アドボケイトセンターが設立された。すでに岡山市の委託を受けて活動を開始している。センター設立にあたっては、弁護士、精神保健福祉士、精神科医、精神障害者ピアサポーターなどが関与している。
独立型アドボケイトの新たな役割を導入することで、どのような未来が待ち受けているのか、当日の議論では、精神科病院の精神保健福祉士、入院経験者、弁護士、自治体職員などの立場から意見を出し合い、アドボケイト導入における課題や可能性、具体的な運用方法について議論を深めることを目指したい。

自主プログラム12

12月3日(日)第4会場(2F 202会議室)9:00~10:30
「多様性と対等性を問い直す ~沖縄・岡山・福島でのダイアローグ実践の広がり~」
企画者責任者:須藤 康宏(医療法人社団メンタルクリニックなごみ)
企画内容
共生社会が叫ばれるようになって久しい。共生社会は、障害の有無に関わらず、すべての人が等しく権利を行使できる社会であり、言い換えれば、多様性と対等性を大事にする社会である。それでは、権利を守るために必要なものは何か。私たちは「ダイアローグ(対話)」が重要だと考えている。ダイアローグの重要な要素のひとつは、「聴く」態度を維持することである。精神障害リハビリテーションでは、安心・安全な場をつくることが基底にあり、話すことや聴くことが中心をなし、それがクライエントの回復につながっていくと言っても過言ではない。
「聴く」ということは、相手を尊重し、積極的な関心を寄せることである。精神科医療・保健福祉分野においても、多様性や対等性を問い直す時期に来ているものと思う。今こそ、共生社会を実現する第一歩として、クライエントが話せる場を保障し、思いやニーズを聴くことが求められているのではないだろうか。一方で、丁寧に話を聴くことはそう容易なことではない。自分の実践を振り返っても、いかにこれまでクライエントの話を聴いていなかったか、聴いたつもりでいたか、戸惑いを隠せない。
現在、全国各地でダイアローグに着目し、学びを深めようとする動きが見られている。沖縄では、いち早くダイアローグを取り入れ、琉球ダイアローグプロジェクトを始めた。岡山では、対話による支援を学ぶ会が発足し、福島では、福島プロジェクトとして広がりを見せ始めている。本企画では、沖縄・岡山・福島の実践を紹介し、あらためて多様性や対等性について問いたいと思う。

自主プログラム13

12月3日(日)第3会場(2F 201会議室)10:30~12:00
「届け!おかやまのピア・家族の元気玉 ~全国の仲間と語り合い~」
企画者責任者:木本 達男(岡山市保健所)
企画内容
従来から、精神障害当事者・ピアサポーター(以下、ピア)が地域生活支援や政策決定の場に参画することは重要であるとされてきた。また、その家族(以下、家族)のケア負担は大きく・社会から孤立しやすいため支援が必要であると指摘されてきた。令和3年3月に、とりまとめられた「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」報告書でも、ピアの活躍、家族への支援は、重要な構成要素とされた。
 しかし、ピア・家族の取り組みについては、法制度や自治体の政策で具体的に示されているものはごく一部にとどまっている。今も、制度政策にあてはまらなくても、団体や個人による活動が実践されている。今回、本学会が開催される岡山の地でも多種多様な活動が実践されている。どの取り組みも、ピア・家族自身の、自らが自分らしく暮らせる街・社会を創りたいという切なる願いや行動力によって成り立っている。このような力を、この分科会では「元気玉」と名付け、それぞれの取り組みや願いを語り合う。
 まずは、岡山の地で活動する団体や個人から発言し、その後、時間が許す限り、参加者にも発言してもらい、それぞれの「元気玉」を高め合う時間とする。

自主プログラム14

12月3日(日)第4会場(2F 202会議室)10:30~12:00
「就労サービス において、なぜ個別支援が重要なのか?
― 伴走型支援が求められる時代の就労サービスを共に考えよう! ―」
企画者責任者:山口 創生(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部)
企画内容
本自主プログラムは、就労サービスにおける個別支援に関するニーズや支援の在り方について再考することを狙いとする。具体的には、登壇者が自身の実践や研究を振り返りながら、個別支援の展望や経験を共有する。また、参加者を含めた意見交換の時間を30分程度設け、個別支援の未来と課題について共に考える機会を設けることを目的とする。

近年、働く精神障害当事者は徐々に増加しているが、雇用の質やサービスの質には課題が残っている。前者の雇用の質については、国もその課題を認識しており、職場環境の整備などに関する施策を進めている(厚生労働省, 2023)。後者のサービスの質についても、関係者の間では長らく課題とされている。特に、様々な企業が精神障害者雇用に関心を持ち、かつコロナ禍以降多様な働き方が推奨されている昨今では、就労に関する当事者の希望や価値観も多岐にわたるため、個別支援のニーズが高まっている。他方、医療制度における診療報酬と障害者総合支援法における報酬制度は、通所・集団支援を前提としたシステムであり、収益性などの問題から就労サービスにおける個別支援についての議論が進まないこともめずらしくない(山口・佐藤, 2018)。そこで、本プログラムでは、多様な立場の登壇者が就労サービスにおける個別支援についての情報を共有し、参加者と一緒に議論をする予定である。

本プログラムの登壇者は、就労サービスにかかわる医師、臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士、研究員で構成される。また、登壇者には、今年から個別支援を中心とした就労支援チームに配属された者から10年以上個別支援に携わってきた者などが含まれており、多職種かつ多様な経験を有する者が発表する企画となっている。具体的な発表内容は、individual placement and support(IPS) に関する研究や実践をもとに、①個別支援の多寡や個別支援と集団支援とのバランス、②医師の立場から就労サービスを俯瞰した際に見える、多様化する社会ニーズと個別支援の重要性、③ワンストップ型で就労と生活サービスの双方に取り組む際に肌で感じる個別支援の重要性、④一人の当事者に対して同一のスタッフが継続的に就職活動を支援する伴走型就労サービスに取り組むことで見えてくる個別支援の長所と課題、⑤新たに個別支援を中心とした就労サービスに取り組むことで見えた長所と課題が含まれる。これらの発表を通して、当事者の希望に沿った個別支援の在り方や社会ニーズに対応した就労サービスの在り方を参加者と一緒に改めて考える予定である。

自主プログラム15

12月3日(日)第3会場(2F 201会議室)12:00~13:30
「リカバリーモデル」は、どうやったら使えるようになるの?
~「リカバリーモデル」の実装(パート2)~」
企画者責任者:伊神 克彦(Companies(カンパニーズ))
企画内容
1.企画趣旨
精神保健福祉の発展において、リカバリーの概念を基軸にすることが国際的な潮流となっており、本邦においてもリカバリー概念の社会実装は重要課題である。しかし、リカバリーは個人の経験を重視し、多様性を強調する概念であり、わが国においての社会実装の実現にはいまだ困難な点が残されている。
この課題に対し、私たちは、一昨年より本学会自主プログラムで「リカバリーモデル」とともに、個人レベルでのモデルの実装の可能性や活用方法について紹介する機会を設けている。紹介した「リカバリーモデル」とは、英国の研究チームが実施した多くの文献レビューにもとづくリカバリーフレームワークである「CHIME1)」、「健康」の視点でリカバリーの概念を捉えた米国薬物乱用・精神衛生サービス局「SAMHSAのリカバリーモデル2)」、精神障害をもつ当事者の取り組みから体系づけられたリカバリーシステムである「WRAP®3)」である。
それぞれのモデルが示しているキーワードや構造は、個人のリカバリーを考えるきっかけとなったり、リカバリーストーリーの表出を補ったりすることが、参加者の発言より示された。そのため、リカバリーモデルの個人レベルでの実装の可能性や、具体的な活用方法について検討を継続することは重要であると考えた。
本年は昨年の自主企画に引き続き、リカバリーの過程にある当事者が実生活におけるモデルの活用に関する経験を発表し、共有することにより、参加者間でモデルの活用方法について検討する機会を設ける。

2.企画の目的
本プログラムの目的は、リカバリーモデルが示す構造の紹介や、モデルの活用事例を共有することにより、個人のリカバリーにおける活用方法の具体案を参加者とともに検討することである。

【参加対象者】
リカバリーモデルについて知りたい、考えたい・語りたい、自分のものにしたい・使ってみたいと思う当事者や家族、実践家、研究者、どなたでもご参加いただけます。

【企画内容・準備】
① CHIMEのフレームワーク、SAMHSAのリカバリーモデル、WRAP®を説明し、各モデルの理念や要素、特徴を共有します。
② グループディスカッションを行います。各モデルに対して参加者が受けた印象や好み、疑問点などについて共有します。
③ 全体に戻り、モデルを実生活に取り入れている当事者の方の活用事例を紹介し共有します。
④ 再度グループディスカッションを行い、参加者自身が想起するモデルの活用方法の具体案について検討します。モデルごとの使いやすさや気づき、要素の解釈などについても自由に共有します。


<文献>
1) Leamy, M., Bird, V., Boutillier, C.L., Williams, J., Slade, M. Conceptual framework for personal recovery in mental health: systematic review and narrative synthesis. The British Journal of Psychiatry 199, 445–452, 2011.
Substance Abuse and Mental Health Services Administration. SAMHSA’s working definition of recovery, 2012.
Copeland, M. E. Wellness Recovery Action Plan®️. Peach Press, 1997.

自主プログラム16

12月3日(日)第4会場(2F 202会議室)12:00~13:30
「語ろう!精神保健教育のクロストーク
~学校教員、当事者、専門職(ソーシャルワーカー&医師&看護師)各々の立場と実践から~」
企画者責任者:田渕 泰子(川崎医療福祉大学 医療福祉学部 医療福祉学科)
企画内容
昨年2022年度から、高校の「保健体育」教科書で40年ぶりに精神疾患に関する記述が復活しました。
新しい教科書では、うつ病や統合失調症、不安症、摂食障害の具体的な症状を記載しています。
 私たちは、平成20年から15年間に渡って、岡山県下の中学校で精神障がい当事者と生徒が交流する「精神保健教育~こころの病気を学ぶ授業~」を学校と当事者団体と共に連携して実践して来ました。授業を受けた生徒数は約7千人となります。授業では、スピーカーズゲストの特技の楽器演奏や詩の朗読会等のストレングスを披露し、当事者が発病前から現在に至る体験を語り、当事者と生徒との交流と対話を核とした授業を実践して来ました。15年間の足跡を当事者、学校教員、専門職から報告させて頂きます。
高校教科書「保健」掲載から1年。私たちと共に、精神保健教育の現状と課題、これからを語り合い、
今後の精神保健教育について、各々の地域のメンタルヘルスリテラシーを耕す機会となればと企画しました。

自主プログラム17

12月3日(日)第3会場(2F 201会議室)13:30~15:00
「家族が困っていることを活用したグループワークー家族支援学を始めよう」
企画者責任者:浅見 隆康(群馬大学健康支援総合センター)
企画内容
精神科医療に繋がることができても、家族の困りごとはあまり少なくならない。私たちが取り組んでいる土曜学校の場でのアンケート調査(2015年5月)からは、医療に繋がっていても、子どもの病状に振り回され、家族自身が他人を避け、悩みを抱えひきこもり、常に暗い気持ちで過ごし、毎日が不安で、一人でもがき、自己嫌悪に陥り、希望が見出せず、どうしたらよいか判断できず、途方に暮れている、などの様子が見られた。当事者の回復を目指すには家族を含めた支援の必要性は叫ばれているものの、まだ十分に行き渡っているとは言い難い。
私たちは第28回愛知大会において、「精神障害リハビリテーションの深化は家族支援学と共に」をテーマに自主プログラムを行い、土曜学校で行っているグループワークの実際を紹介した。そして家族が本人の行動変化に着目し、できるという視点から本人の様子を捉え直すこと、そのためには家族自身が自分の行動を同様の視点から見つめられるようになること、などを伝えた。
今回は学会に当日参加した家族、あるいは家族支援者から、「家族が困っていること」を募集し、困りごとへの具体的対処法を参加者と検討し、併せて土曜学校での実践も紹介する。
私たちは困りごとがあると気づくから相談する。相談した結果がもし次の一歩となるのなら相談できた自分を肯定的に評価することになる。そのような、家族が困っていることを活用したグループワークの方法について提案する。
私たちの支援目標は、社会生活に何らかの支障をきたし、困りごとを抱え、何とかしたいと思っている本人、家族に対し、生活の様子を見て、行動を変える視点で生活の仕方を評価し、課題を見つけ、解決に向け取り組んでいくことである。一つの家族の変化は、その地域に住む、同じ状況に置かれた家族に影響を与え、その影響を受けた家族の変化は、さらに別の家族に伝播することになる。こうした家族たちの変化は、やがては地域を変えていくことになるだろう。

自主プログラム18

12月3日(日)第4会場(2F 202会議室)13:30~15:00
「「はじめよう!IMR」
Illness Management and Recovery:疾病管理とリカバリー」
企画者責任者:藤田 英美(横浜市立大学附属病院精神科心理室)
企画内容
 IMRは、統合失調症などの精神疾患を経験した人が、人生の目標に向かって前進するために必要な情報や技術を獲得し、精神疾患を自己管理できるようになるための、パッケージ化された心理社会的介入プログラムです。アメリカ連邦政府によるEBP(Evidence-Based Practice)実施・普及ツールキットシリーズのひとつで、科学的根拠にもとづいた実践とされていて、2009年に本学会から日本語訳が発刊されました。リカバリー、精神疾患、薬物治療、ストレス対処、ソーシャルサポートなど9のテーマ(最新版はアルコールと依存性薬物のテーマが追加され10のテーマ)から構成されており、各テーマにつき平均4回程度のセッションで進めていきます。グループでも個別でも実施も可能ですが、グループで実施されることが多いです。
 IMRには、参加者が自分なりのリカバリーに向かって進んでいくための工夫が豊富に盛り込まれています。配布資料には、リカバリーに役立つ情報や、病気を自己管理するために役立つ情報が豊富にあり、実施者用の詳細なマニュアルもあります。また、認知行動的技法や動機づけの技法が組み込まれており、参加者が学びやすいように工夫されています。じっくりと取り組んでいく中で、自分なりのリカバリーの定義を見つけ、希望を持ち、人生を主体的に選択していけるという感覚を得て行きます。
 内容が豊富であり、標準的なセッション数は約40セッションと比較的多いことから、「内容が難しいのでは?」「期間が長いのでは?」といった懸念が聞かれることがありますが、参加者に合わせた工夫やIMRが安心して体験を語れる場となることにより、参加者にはそれらの負担は少ないことが多いようです。疾病管理も目指している点から医療機関で導入しやすく、デイケア、病棟などで実施されることが多いですが、地域生活支援センター、リワークプログラム、訪問看護などでの実践も増えてきています。
 本シンポジウムでは、IMRの概要や有効性を紹介するとともに、有効性を認めなかったケースの実践報告を行い、IMRの導入が難しいケースや工夫について、ディスカッションを通して考えていきたいと思います。

【参加対象】IMRに興味・関心がある方、始めようと考えている方、既に実施している方など、どなたでも是非お気軽にご参加ください。
【内容】1)IMRの概要と各論、2)実践報告とディスカッション、3)質疑応答

自主プログラム19

12月3日(日)2F 休憩スペース(2F ホールロビー)13:00~14:30
「リハビリテーションが活性化する心理教育やプログラムのノウハウ
新しい視点のプログラムの実践を体験してみませんか?(VRを利用するSSTなど)」
企画責任者:木村 尚美(医療法人社団宙麦会 ひだクリニックお台場)
企画内容

はじめに
医療法人社団宙麦会ひだクリニックお台場(以下当院)では、2023年1月よりFECE DUO(VRによるSST)を開始した。
当院のデイケアのSSTは本院のデイケアにならい様々なかたちのSSTを導入している。
様々なと言うと多方面からの疑問が起こるかもしれない。この企画では、そもそものSSTの目的や、原則に基づくことなど含めて、当法人が今まで行ってきたSSTや新しい形のSSTについてメリットやデメリットなど参加者と検討してみたい。

当院におけるリハビリテーションプログラムの概要
当法人では、米国が定める科学的根拠に基づいた(EBP)心理社会的介入5項目に基づくリハビリテーションプログラムを開院当初から展開し、精神科デイケアを有している。
デイケアは、数年前から機能分化をして、デイケアにおけるリハビリテーションの効果を上げるための小さなグループによる利用者の目的に合ったデイケアの運営をしている。
当法人のデイケアでは、ロバート・ポールリバーマン著書 「精神障害と回復」より
「精神障害者リハビリテーションは、障害のある人が、暮らし、学び、働き、そして症状からの影響を最小限に抑えつつ地域社会の中でできる限り正常に自立して機能するのに必要な、認知的、情動的、社会的、知的、そして身体的なスキルを身につける援助を提供する」の実践をすることを目的とし、
そして、このリハビリテーションプログラムの中で、最も重要視するプログラムの中に心理教育・SSTがある。基本指針は、自由・管理しない・自主的活動支援である。

当院独自で進めてきたSSTの構造
1.治療的モデルSST(スタッフによる基本訓練モデルのSST)
  面接→アセスメント(問題や課題の抽出) →練習しよう
2.希望注目モデルSST(スタッフ・当事者協働で行うSST)
  プロデュース大作戦、その他恋愛SSTや仕事SSTなど
  未来に起こりうることや、将来への夢や希望に沿った不安や問題への問題解決技能訓練や練習
3.セルフヘルプモデルSST(ピアサポーターを中心としてコミュニティミーティングの中での展開)
  自分たちで解決できる力を持つために・・・
4.訪問におけるSST(訪問看護ステーションが自宅で行うSST
5.新たなSSTの展開 「FACEDUO」!
  スキルに自信がなくても、いろいろな場面で楽しくSSTができる

今回の企画では、実際にVRを使用し参加者に新しいSSTの形の体験をしてもらい、いろいろな意見交換やSSTの未来などを話し合いたい。