第37回日本外科感染症学会総会学術集会

ご挨拶

第37回日本外科感染症学会総会学術集会
会 長:小野 聡
(新久喜総合病院 消化器センター)
 この度は、第37回日本外科感染症学会総会学術集会会長を拝命し、2024年11月8日(金)9日(土)に東京浅草の地におきまして、学会総会を主催させていただきます栄誉を賜りました。本学会役員、会員をはじめとした関係各位の皆様方に心より感謝申し上げます。
 私は1998年 第11回日本外科感染症研究会の時から本学会で発表し、2002年に評議員にさせていただきました。その後、外科感染症学研究をライフワークとし術後感染性合併症から派生する敗血症、多臓器不全の病態に関する臨床的・実験的研究について発表してきました。また第19回日本外科感染症学会が防衛医科大学校外科の望月英隆教授が会長の際には事務局長として学会の運営に携さわらせていただきました。この度、多くの諸先輩の先生方が築き上げて来られた歴史と伝統のある学会を主催させていただくことは大変光栄に存じますと共に責任の重さを実感しております。
 今回の学術集会のテーマは「未来に繋がる外科感染症学」にいたしました。外科感染症学という学問は古くから重要なテーマであります。しかしその一方で、若手外科医師の多くは手術手技を極めることに傾注する意識が強いため、外科学総論の重要性に接する機会が少なく本学会を通じて改めて認識してほしいという思いを込めてこのテーマに決めさせていただきました。近年、外科手術手技の進歩により侵襲の小さな手技として鏡視下手術やロボット手術が積極的に行われています。その結果、術後の遠隔部位感染やsuperficial SSIの発生率は減少していると思いますが、体腔内SSIに関してはほとんど変わっていないと思います。また、術後感染性合併症の発生は癌手術患者の長期予後を悪化させるというデータも近年数多く報告されています。ではなぜ術後感染性合併症を起こすと癌の長期予後が悪くなるのでしょうか。また今後は高齢者などcompromised hostの増加により耐性菌感染が増加し既存の抗菌薬治療だけでは十分な効果が期待できない状況に陥ることも想定されます。そのような場合は、耐性菌を貪食し処理する確固たる生体防御能が必要になります。外科感染症学を議論する上で重要なことは、細菌の特徴を理解することは当然ですが、周術期感染管理、さらには重症感染症時の生体反応を理解し治療に応用することはさらに重要であります。また本学会の今後の方向性として、看護師、薬剤師、臨床検査技師などの多職種が参加し、それぞれの立場から意見を出し合い、チーム医療として周術期感染管理対策の確立を目指すことだと思います。是非、皆様の実臨床での新しい知恵や経験、そして研究成果を発表していただけますことを期待しております。
 開催地である浅草は、浅草寺をはじめ多くの東京の古い文化が残っている場所でありますが、そのすぐ隣には東京スカイツリーという世界一高い電波塔がそびえて立っています。東京スカイツリーの高さは634mですが、当初は浅草寺が創建された628年に因み628mの案もあったようです。最終的には武蔵野国の語呂に合わせも考慮し634mになりました。このように天高くそびえたつ東京スカイツリーをみながら外科感染症学を新たな視点から考えたく「未来に繋がる外科感染症学」というテーマにしました。今一度皆様と一緒に浅草で楽しく有意義な学会にしたいと思いますので、何卒、よろしくお願い申し上げます。