当番世話人挨拶
川崎医科大学総合医療センター・川崎医科大学 総合外科学の中島一毅です.
この度,2025年8月22日(金),23日(土)に倉敷市のアイビースクエアにて,第26回乳癌最新情報カンファランスを開催いたします.本会は,夏のレクリエーションを兼ねた合同勉強会と考えておりますので,今回は乳癌の診断,手術,薬物療法など,乳癌診療全領域の最新情報を学んでいただけるよう企画しました.各分野の特別な講師陣に講演を依頼,ご登壇いただける運びとなりました.ぜひご来場の上,楽しく勉強してください.
会場であるアイビースクエアは,一昨年のG7サミット会場として世界的に知られるようになったホテルです.外観はレトロな雰囲気を残しつつ,内部は最新設備へと改装されており,夏の暑さの中でも快適にお過ごしいただけます.ホテル内にも多くのインスタ映えするポイントが散在していますし,会場を出るとすぐに中国地方有数の観光地「倉敷美観地区」が広がり,多数のおしゃれなカフェもありお楽しみいただけると思います.また,皆さまが学生時代に美術の教科書でご覧になった名画の多くを所蔵する「大原美術館」も美観地区にあります.本カンファランスの参加証で自由にご入館いただけるよう手配しておりますので,ぜひ美術鑑賞もお楽しみください.本物の名画をご堪能いただけます.ここは絵画保護のため,特に涼しくしありますので,体を冷やすのにもぴったりです.初日の夜に企画している全体懇親会では,岡山の夏を代表する「岡山産マスカット」や「もも」の逸品を多数ご用意する予定です.「フルーツ王国 岡山」で,ぜひ本場のフルーツをご賞味ください.
さて,本カンファランスの中心となる勉強企画内容について,診断,手術,薬物療法の分野毎にご紹介いたします.
【診断分野】
まず,最近話題となっており,次回のACR-BIRADSへの掲載も決まっている「GTC(Glandular Tissue Component)」についてです.本内容のパイオニアであるソウル大学のMoon教授にご講演いただき,同じく韓国のKim先生にはGTC判定の最新AIプログラムと多国籍間での臨床試験をご紹介いただきます.
次に2025年6月末に刊行された「乳癌取扱い規約第19版」について,日本乳癌学会規約委員長の山口倫教授より,乳癌診療・画像診での規約第19版の活用法を中心に改訂ポイントをご解説いただきます.今回の「乳癌取扱い規約第19版」の改討の方向性を鑑みると,今後の乳癌画像診断では「乳癌の組織像を推定する」ことが重要になると考えられます.そこで「画像診断による乳癌組織像推定」のレクチャーとして,「MRI診断による組織像推定」を京都大学の片岡正子教授に,「超音波による組織像推定」を木村芙英先生,柏倉由実先生,石部洋一先生,太田裕介先生に実例を挙げてご解説いただきます.
さらに,今後のコンパニオン診断として注目されている「Liquid Biopsy」についての講義を国立がん研究センター東病院の内藤陽一先生にお願いしました.来年にはあたりまえとなるかもしれません.是非,勉強してください.また,すでに臨床応用されていますが,今後さらに拡大されていく癌ゲノム診断の「Foundation One」について,丁度,C-CAT登録が10万人を超えたことをふまえ,東北医科薬科大学の多田寛准教授にご講演いただきます.遺伝子関連の最新の知見を学びましょう.
【手術分野】
現在の乳癌手術には根治性はもちろん,術後の整容性も高いレベルが求められます.そこで,基本手術手技である「切る」「縫う」について,美しい仕上がりを追求する手術技術の講義を企画しました.そこで蘇春堂形成外科の矢島和宣院長に,傷を目立たせない切開・縫合手技の講義をお願いし,ご承諾いただきました.手術の基本に立ち返り勉強いただきたいと重います.また,乳房術後整容性の要となる皮弁作成や自家組織再建手術においては,特に乳房皮膚解剖について詳細に把握,理解することがなにより重要です.この最新知見について,慶應義塾大学の今西宣晶先生にご講義いただきます.どちらも他では聴くことのできない貴重な内容です.ぜひご聴講ください.
さらに,今後,乳癌領域でも普及が期待される「ロボット手術」について,「DaVinciによる乳癌手術」を亀田総合病院の福間英祐先生に,「DaVinci SPによる乳房切除後の乳房再建術」を藤田保健衛生大学の井上義一准教授にご講演いただきます.興味深い内容です.是非,受講ください.
【薬物療法分野】
薬物療法については,今後臨床導入が進む「経口SERDs」について,臨床試験デザインからみた臨床的位置づけを国立がん研究センター中央病院の下井辰徳先生にご講演いただきます.CDK4/6阻害剤が術後補助療法としても用いられるようになった今,「経口SERDs」をどう活用するかが次の重要な課題ですが,数多くの「経口SERDs」が開発,臨床試験中でかなり複雑です.この機会にぜひ知識を整理していただければと思います.
また,これから中心となっていく薬物治療であるICI(免疫チェックポイント阻害剤)については,その有効性を高め,かつirAEを回避する工夫が関心を集めています.がん免疫療法の専門家である昭和大学臨床薬理研究所臨床免疫腫瘍学の吉村清先教授に,「免疫チェックポイント阻害剤を有効に働かせるための工夫」についてご講演いただきます.臨床に直結する知識となることを期待しております.是非,ご聴講ください.
ホルモン陽性乳癌への薬物療法については,「閉経前乳癌を理解するために必要なこと」を来年の日本乳癌学会総会会長である福島県立医科大学腫瘍内科学の佐治重衡教授にご講演いただきます.それから,「HR陽性/HER2陰性早期乳癌のRecurrence Scoreを用いた治療戦略」を昭和医科大学乳腺外科の林直輝教授にご講演いただきます,さらに今後,適応が多様化していくADC製剤についても,「HR陽性/HER2陰性 転移・再発乳癌の薬物療法Update」として,京都大学乳腺外科学分野の増田慎三教授にご講演をいただきます.
トリプルネガティブ乳癌への薬物療法としては,ADC製剤について再来年の日本乳癌学会総会会長である熊本大学乳腺・内分泌外科の山本豊教授にご講演いただきます.また,遺伝性乳癌に関しても,「HBOCの診断と乳癌の薬物治療」として,川崎医科大学乳腺甲状腺外科学の平成人教授にご講演いただきます.
さらに「乳癌治療の最前線~早期乳癌と転移・再発乳癌の最新エビデンスと臨床応用~」として千葉大学の髙田護先生,兵庫県立がんセンターの田根香織先生にご講義をいただき,「RWEの解釈と臨床応用」について京都大学医療統計生物情報学の森田智視先生と相良病院の相良安昭先生にご講演いただきます.
盛りだくさんの内容となっておりますが,夏の観光地で,楽しみながら最新情報を学べる場をご用意いたしました.どうぞゆったりとご参加いただき,実りある時間をお過ごしください.
なお,多数の貴重な講演が企画できましたので,ご来場が難しい先生方に対し,ライブ配信も用意しております.ふるってご参加いただきますようお願い申し上げます.
第26回乳癌最新情報カンファランス
当番世話人 中島 一毅
川崎医科大学総合医療センター 外科/川崎医科大学 総合外科学