日本医療検査科学会第36回春季セミナー

ご挨拶

日本医療検査科学会第36回春季セミナー開催にあたって

日本医療検査科学会第36回春季セミナー
例会長 末岡 榮三朗
佐賀大学医学部臨床検査医学講座
佐賀大学医学部附属病院検査部・輸血部

 このたび、日本医療検査科学会第36回春季セミナーの例会長を担当させていただくこととなりました。不慣れではございますが、どうかご指導ご鞭撻の程何卒よろしくお願い申し上げます。
 今回のテーマは「PHRと臨床検査 -個別化医療における検査医学の役割-」とさせていただきました。プレシジョンメディスンにおける臨床検査の役割については、前大会長が示されたテーマを引き継ぎながら、患者さんにとって最適化された個別化医療を展開するうえで、個々人の医療データをどのように収集し連携するかを今回の春季セミナーのテーマとさせていただきました。
 様々なデータを利活用するうえで人工知能(AI)の進化は急速で、あらゆる医療活動の場面で部分導入が行われようとしています。一方で、ビッグデータの構築や利活用の推進も国家的規模で行われていることも皆さんご存知のとおりかと思います。また、がん遺伝子パネル検査の保険診療への導入を機にゲノム医療についても、オミックス解析が研究から医療実装へと急展開を迎えようとしています。
 そのような背景を踏まえて、検査医学において求められる課題として、最適化された個別化医療を展開するために必要な個人の医療情報を単に検査結果として扱うのでなく、個人の生体活動の一環としてデータを収集蓄積し、質の良いpersonal medical recordとしての機能を発揮できる環境を整えることが求められると思います。
 本セミナーでは医療活動に有益な生体情報をいかに収集し、個人の健康状態評価に利活用していくかについての技術的な進歩、膨大な医療情報をAIやディープラーニングを用いた診断への利活用事例、県単位で取り組む生活習慣病対策とPHR構築の取り組みなどを取り上げたいと思います。その他、シンポジウム等では、検査医学の立場においてビッグデータの構築からPHRへの展開に尽力されている方々に参画いただき、議論を深めたいと思っております。
 皆様にとって、佐賀の地は初めてかもしれませんが、気候的にも一番過ごしやすい季節で、近場に温泉地も複数あります。また、日本海と有明海という2つの海に面して海の幸も豊富です。この原稿を書いている時点ではCOVID-19第5波の真っただ中ですが、大会時期のころは沈静化して皆様方にお会いできると信じて準備してまいります。是非とも佐賀に足をお運びください。
 皆様の多数のご参加を心よりお待ちしております。

2021年8月吉日