第27回日本摂食障害学会学術集会

会長挨拶

第27回日本摂食障害学会学術集会
会長 西園マーハ 文(明治学院大学 心理学部)
第27回日本摂食障害学会学術集会の会長を務めさせていただくことになりました。摂食障害は、有病率が高い疾患でありながら、日本国内ではまだ治療体制が万全とは言えません。今回のテーマは、「回復への道を探求する: Searching for paths to recovery」とし、参加していただいた方々が、それぞれの現場で前向きに治療を行っていっていただくアイディアや希望が持てる会にしたいと思っております
今回は、明治学院大学白金キャンパス(東京都港区)にて対面開催とし、さまざまな教育講演、シンポジウム、一般演題のプログラムを企画中です。摂食障害からの回復には、身体の回復が第一歩ですが、それだけでなく、心理面での回復や、社会参加の支援法にも焦点を当てたいと思います。近年、精神医学の分野では、「リカバリー」という概念が知られるようになっています。これは、医療者と統合失調症の当事者の方々との協働作業の中で生まれてきた言葉ですが、症状が回復する「臨床的(医学的)リカバリー」だけでなく、個人の生活が充実する「パーソナルリカバリー」や、社会に参加する「社会的リカバリー」も重要だとされています。摂食障害においてもこれらは重要で、個人が自信をつけること、そして社会参加をしていくことで、摂食をめぐる症状は薄らいでいくことも多いのです。もちろん病状が重い時に社会参加をするのは難しいため、これらのリカバリーのバランスを取っていくことが極めて重要です。今回は、このような視野を持って、参加者の方々の間で意見交換ができればと思っております。
また、回復を進めるためには、研究方法の開発や研究の充実も欠かせません。「治療アウトカム」をどのように設定するかで、回復しているかどうかの判断は変わってくるからです。また、未受診だったり治療を中断する場合も多い疾患のため、これらの方々のニーズも知り、効果的に見える治療法がこれらの方々の役に立つのかという視点も持っておく必要があります。
回復への「道」は、今回、英語ではpathsとし、複数のイメージにしました。この学会でさまざまな職種の方々の考えに接することで、行き止まりに見える治療に、また別の道を探索する機会になればと思っております。
本学の創設者J.C.ヘボン先生は、ローマ字表記法の開発などで知られていますが、医師でもあり、幕末から明治時代にかけて多領域で活躍されました。学際的な伝統が感じられるキャンパスの中で、回復について語り合う機会となれば幸いです。多くの方々のご参加を心からお待ちしております。
‘Do for others’他者への貢献(本学の教育理念)
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