会長挨拶
第19回日本統合失調症学会を開催します。統合失調症は言うまでもなく精神科医にとって中心的な課題となる疾患であり続けています。青年期に約1%の確率で発症し、生涯に渡って付き合う必要のある症状を呈する疾患です。精神科における心理療法も、薬剤も、社会的なサポートシステムもこの疾患を克服するために発展してきたといっても過言ではないでしょう。その中で日本統合失調症学会は、当事者や家族と専門職が共に創造する運営を続けてきました。学会といえば専門家らが難しい顔をして、難しい話しをする場という印象をお持ちかもしれませんが、この学会はそういった面も保ちつつ、一方で、全ての関係者に開かれた場としての一面も持つように、現理事長を中心として発展してきました。2024年の大阪大会でも同様に、統合失調症を思う多くの方が集う場にしたいと企画を進めています。
ポスターに描かれた絵画について説明します。本作はフランスのジャン=フランソワ・ミレーによって1850年に制作されたもので、山梨県立美術館に所蔵されています。彼はもともと農家の出身で、都会のパリから離れ、地方であるバルビゾン村で他の仲間らと共に絵画制作を行いました。本作はそんな時代に農民の生活に寄り添った中で生まれました。自然の営みの中で、収穫への希望を込め大地に力強く種を蒔く人を描いた本作は革新的なもので、その後「落ち穂拾い」や「晩鐘」といった作品で名声を高めました。私は統合失調症の様々な側面を思うときに、人類が克服すべき多くの困難さを感じます。しかしながら、先達が希望を失わずに新しい治療法を開発したり、それを試験的に服用したり、ガイドラインを作成したり、ピアサポーターが声をかけたり、再発する家族を前にした方が精神科医に助けを求めたり、それに答えるために専門職が頭を突き合わせてディスカッションしたり、この疾患を巡って様々な場面が世界中であったことでしょう。その中でも未来への希望を捨てずに種を撒いた方がいたおかげで、現在の統合失調症とその治療やサポートシステムが形作られてきたと考えています。本会にも多くの種を蒔こうとする方が集ってくださるのを願って止みません。
最後に今大会の特徴として、大阪府北部に位置する大学での開催とあり、地域に密着した方々にプログラム委員を依頼しています。近隣には多くの精神科病院が位置しており、たくさんのピアサポートプログラムが発展しています。医師に限らずにそういった病院で勤めておられる方々にもぜひご発表などを通じてご参加いただき、様々な方との関係を広げてくださることを願っています。同じような悩みを持つ者同士で交流を深め、引いては担当する患者さんの治療やサポートにつながることになることでしょう。多くの皆さまと現地でお会いできることを楽しみにしております。
第19回日本統合失調症学会
会長 金沢 徹文
大阪医科薬科大学 医学部 総合医学講座 神経精神医学教室