ご挨拶
「MRSAフォーラム2026」の当番世話人を務めさせていただきます、大阪公立大学の掛屋でございます。 日頃より本フォーラムの活動を支えてくださっている先生方、そして日々、感染症診療と感染対策の最前線でご尽力いただいている皆様に、心より御礼申し上げます。
本年のテーマは 「チーム医療で挑むMRSA感染症」 です。 多彩な薬剤耐性菌(AMR)が蔓延する現代においても、MRSA感染症は依然として我が国の臨床現場における重要課題であり、抗菌薬の適正使用や耐性菌の拡大防止には、多職種の緊密な連携が不可欠です。医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、感染管理認定看護師など、多様な専門職がそれぞれの知識と経験を持ち寄り、患者さんに最善の医療を届ける体制の構築が強く求められています。
本フォーラムでは、最新のエビデンスに基づく治療戦略から、院内での実践的な感染制御、多職種協働の成功事例に至るまで、幅広い議論が展開されます。とりわけ、耐性菌対策を「一部の専門家の努力」にとどめず、「医療チーム全体の挑戦」として共有できることに大きな意義があると考えております。
また、基礎研究の果たす役割も決して忘れてはなりません。検査部門はMRSAの同定に加え、分子生物学的手法により伝播様式や疫学の理解を進めてきました。こうした基礎的知見は、臨床の現場での対応策や新規治療法の開発に直結します。薬理学的研究からは、各抗MRSA薬の最適な投与法が導かれ、新薬開発の可能性も広がりつつあります。基礎研究と臨床研究の双方向的な進展こそが、持続的なAMR対策の基盤となると確信しております。
今回は、従来参加が限られていた看護師を対象としたセッションも予定しております。当院では、感染管理認定看護師が現場の看護師と協力し、MRSAをはじめとするブドウ球菌菌血症の全症例で原因究明を行っています。こうした取り組みを通じ、On the Job Trainingによる現場力の向上を強く実感しております。医師は、あらゆる職種の知恵と協力を得て、最善の診療を追求しています。
本フォーラムが、参加される皆様にとって新たな知識を得る機会となるとともに、互いに学び合い、つながりを深める契機となることを願っております。そして、ここで培われた基礎研究の成果と協働の精神が臨床現場で実を結び、MRSA感染症に立ち向かう力へと発展していくことを期待しております。
最後になりますが、本フォーラムの開催にあたりご指導を賜りました世話人の先生方ならびに、多大なご支援をいただきました企業の皆様に、心より感謝申し上げます。今回は大阪公立大学「I-siteなんば」会議室にて開催いたします。基礎研究から臨床研究、さらには抗菌薬適正使用活動に至るまで、多様で新たな知見を盛り込んだ演題が寄せられることを大いに期待しております。
皆様と大阪でお目にかかれる日を、心より楽しみにしております。
MRSAフォーラム2026
当番世話人 掛屋 弘
大阪公立大学大学院医学研究科 臨床感染制御学