ご挨拶
第18回九州遺伝子診断研究会に寄せて
第18回九州遺伝子診断研究会
当番世話人 末岡 榮三朗
佐賀大学医学部 臨床検査医学講座/
佐賀大学医学部附属病院 検査部・輸血部
新型コロナ感染症によるパンデミックにより、皮肉なことに遺伝子診断検査の体制整備や人材育成の重要性がクローズアップされることになりました。本研究会は今回のような事態を想定したわけではないと思いますが、濱崎先生、安東先生、康先生など諸先輩の先見的な構想からスタートし有意義な活動を続けてまいりました。今回のパンデミックで、臨床現場が振り回される状況の中でも着実に検査体制を整備することができたのは、本研究会のこれまでの活動が基盤となったと信じています。昨年の本研究会は、鹿児島大学医学部の橋口照人教授のご指導のもと、「ゲノム解析を実装する次世代検査室の実現に向けて」というテーマで開催できました。様々な制限の中で、非常に重要なテーマを取り上げていただき充実した会となりました。特別講演いただいた千葉大学の松下一之先生には、今後のゲノム医療の発展に伴う遺伝子検査の課題と展望について示唆に富むお話をいただき、本研究会の使命について改めて考えさせられる機会ともなりました。
2020年に始まったCOVID-19の感染拡大は、日常診療における遺伝子検査が様々な医療施設で急速に広まることにつながりました。一方、そのような遺伝子検査の自動化や実施施設の拡大によって、遺伝子検査に対応できる人材育成の必要性や精度管理の問題に取り組むことの重要性も課題として示されました。さらに、昨年の9月には「全ゲノム解析等実行計画2022」が制定され、今後、ゲノム医療はがんや感染症、一部の遺伝子関連疾患にとどまらず、あらゆる医療分野に展開されていくと考えられます。そのようなゲノム医療の展開の中で、遺伝子診断を臨床現場の日常診療の一部として質の高い検査技術として提供するためには、何が必要かを再考する場が必要だと感じています。
九州地区の臨床検査に携わるスタッフが、職種や専門性を超えて気軽に集まり、参加者が遠慮なく意見交換や質疑を行える、この研究会の強みを生かしながら、施設間の交流やお互いの得意分野を活かした連携を続けることを切に願っています。今回も職種や施設の枠を越えた活発な意見交換や情報共有ができれば幸いです。