第26回日本がん免疫学会総会

会長挨拶

第26回日本がん免疫学会総会
会長 原田 守
島根大学医学部 免疫学講座

 この度、第26回日本がん免疫学会総会会長として、2022年7月20日(水)~ 22日(金)、松江市において総会を開催させて頂くこととなりました。

 第26回総会のテーマとして、私のがん免疫・免疫療法への思いを込め、『すべてはがん治癒のために - Integrate all for curing cancers -』とさせていただきました。免疫チェックポイント阻害抗体療法の成功はがん免疫に関する状況を一変させ、免疫療法に反応する症例と反応しない症例の比較解析が可能になりました。さらに、限られた悪性疾患では遺伝子改変T細胞移入療法の有効性も認知されました。しかし、これらの治療でも効果を示さない症例も多くあり、治療効果を高めるためには様々なことをintegrateする必要があると考えこのテーマとしました。第1に、自然免疫と獲得免疫の統合的制御です。抗がん効果においてT細胞が中心的な役割を担うにしても、その誘導には樹状細胞が必要であり、また、HLAクラスI を欠失したがん細胞に対しては自然免疫系細胞が必要です。第2に、抗がん免疫応答と免疫抑制の統合的制御です。免疫チェックポイント阻害抗体療法は、抗がん免疫応答の増強だけでは不十分で、免疫抑制の解除が重要であることを示してくれました。そして、免疫抑制性細胞の制御も必要です。第3に、免疫療法と他のがん治療との統合です。免疫療法による治療効果を高めるためには、抗がん剤・分子標的薬・放射線療法などとの併用が必要と考えられます。第4に、基礎と臨床を両輪とした双方向性の統合的研究の推進です。最後に、すべてのがん研究分野の統合です。がん免疫療法の治療効果に腸内細菌が関与することや免疫細胞のエネルギー代謝、がん細胞シグナル、がん細胞死、低酸素・低pHながん微小環境など、がんの治癒を目指すために、がんに関連する様々な研究分野の知識が必要です。がん研究分野の境界がなくなりつつあります。

 2022年7月、日本で最初に医療行為を行ったと伝えられている大国主命を祀る出雲大社のある島根に、多くの研究者・臨床医の先生にご参加賜りますようお願い申し上げます。