第10回日本婦人科ロボット手術学会

会長挨拶

第10回日本婦人科ロボット手術学会
会長 小阪 謙三
静岡県立病院機構 静岡県立総合病院
女性・小児センター長 産婦人科部長

 産婦人科領域におけるロボット支援下手術は、2018年の子宮体癌および良性子宮腫瘍に対する子宮摘出術に続き、2020年には子宮脱に対する仙骨膣固定術も保険収載となりました。それまでも、臨床試験や病院負担、自費診療でロボット手術は行われてきましたが、やはりこの保険収載によって多くの産婦人科医がロボット手術に取り組み始め普及が加速しました。この際、最も注意を払わなければならないのは言うまでもなく患者さんの安全です。現時点で患者さんに対する明らかなベネフィットを示すエビデンスのない婦人科領域のロボット手術の導入・使用によって事故発生頻度が高まることは厳に避けなければなりません。事故を未然に防ぐためには、導入前の十分な準備、プロクター制度を利用した導入あるいは既施行施設で指導できる人材を育成したうえでの導入施設への派遣、そして安全を最重要視した1例1例の施行です。そのために、私たちはプロクター制度を十分に利用するとともに、これまでに起こったインシデント・アクシデントを改めて学びよく知ることが極めて大事と考えます。ロボット手術は優れた面もたくさんある手術ですが、一方で独特な特徴を有しており、開腹手術・腹腔鏡下手術ではありえなかった独特のインシデント・アクシデントひいては事故が起こり得る手術です。これらロボット手術の特徴、実際に起こったインシデント・アクシデントをすべての婦人科ロボットSurgeonが熟知することが極めて重要と考えます。

 術式とそのTIPS・成績などに関しては、良性腫瘍、子宮体癌、仙骨膣固定術の経験が蓄積されている段階だと思います。これらを「婦人科robotic surgeryの現在地」としてしっかり議論したいと思います。

 また、ロボット手術はまださほど古いジャンルではありません。今後の展開が大きく期待され将来性が極めて高い分野であると考えられます。

 近未来には、子宮頸癌に対する広汎子宮全摘術の保険収載、傍大動脈リンパ節郭清の普及・保険収載が期待されます。また、MEDICAROID社のHinotoriは婦人科手術への保険承認拡大が見込まれており、Riverfield社、A-traction社の新しい機械もこれに続く可能性は大いにあります。Johnson&Johnson社は6本アームの機械を導入予定とされています。耳鼻科領域では悪性腫瘍のoverall survivalの改善が示唆されるデータが集積されており、新しい機械の導入ががん診療に大きなインパクトを与え得ることを示しています。

 また社会全体の在り方にも大きな影響を与えるAI技術、deep learningはロボットに親和性が高く、当然婦人科領域のロボット手術にも影響を与えると考えられます。他科領域では既に、手術中リアルタイムでAIによる安全域・危険域の提示が実用レベルに近づいており、手術技能評価にもAIを使用する試みが進んでいます。

 さらには、医師偏在および昨年からのコロナ禍と近々適応の広がる働き方改革の影響もあり、遠隔教育さらには遠隔手術も今後広く行われるようになると考えられますが、昨今の5Gの進歩で技術的問題はクリアされようとしています。

 そして、AIやdeep learningの導入の先には手術の「自動化」が想定されます。もちろんすぐに到来する訳ではないと思いますが、現在修練中の若い先生方がベテランになる頃には少なくとも一部は実現している可能性は高いのではないかと想像されます。実際、縫合などに関しては、データ動画をAIが特有のアルゴリズムに従って自己学習しロボットアームが再現するといった試みが既にインターネット上でも公開されています。未来のことを話すと鬼が笑うとは申しますが、鬼に笑われつつこのような部分についても少し想像を逞しくしてみたいと思っています。

 今回学会を開催させて頂く静岡市は県庁所在地ですが、医学部がないため先生方にはあまり馴染みがないかと思います。歴史的には、今川家、徳川家にゆかりが深く、家康公が8歳から19歳に至る11年間を今川家の人質として過ごされたのが臨済寺で、浅間神社にて元服されました。また、将軍退位後、晩年に大御所政治を行われたのもこの地で、駿府城で亡くなられ久能山東照宮に葬られました。社殿は現在国宝となっています。また、第15代将軍慶喜公が隠居後過ごされた邸宅の庭園が保存されており、跡地にございます料亭・浮月楼で名園を愛でながらの懇親会を予定しております。

 1月の静岡市は統計的に全国有数の日照時間を有し快晴の日が多いため、学会場であるグランシップから富士山を眺めて頂ける確率も高いかと思います。一足伸ばされて、日本観光地百選コンクールで1位に選ばれた日本平から富士山の絶景をご覧頂くのも一興と思います。同地のホテルでご宿泊あるいはランチタイム・ティータイムを過ごされれば必ずや素晴らしい思い出となること請合いです。お時間がなければ、手軽に日本平夢テラスからご覧頂くのもよいでしょう。また、野趣を求めて歴史ある景観地三保の松原からご覧頂くのももちろんお勧めです。小さなお子様連れの先生方には、石垣いちご狩りも最盛期でお勧めです。

 是非、お茶とみかんの街、静岡市で富士山を眺めながら活発な討論ができることを楽しみにしております。

2021年5月吉日

 昨年より猛威を振るっておりますコロナ感染症は現在一時的な小康状態に入っておりますが、感染症においては将来予測が極めて難しく直前の変更は学会員の先生方に多大なご迷惑をお掛けすることになるため、予定しておりました懇親会は中止とせざるを得ないと判断致しました。苦渋の決断ではありますがご理解頂けますよう何卒よろしくお願い致します。

2021年10月吉日