真菌症フォーラム2020学術集会

会長挨拶

真菌症フォーラム2020学術集会の開催にあたって
『Stewardship時代における真菌症診療を考える』

真菌症フォーラム2020学術集会 会長
慶應義塾大学医学部救急医学
佐々木 淳一

 真菌症フォーラム2020学術集会を会長として担当致しますことは,小職ならびに慶應義塾大学医学部救急医学にとりまして,誠に名誉なことであります.

 真菌症フォーラムは,その前身である深在性真菌症フォーラム学術集会(1994年〜1998年)の時代を経て,2000年より真菌症フォーラム学術集会として開催され,今回で26回の開催を数えることになりました.本フォーラムの大きな功績は,『深在性真菌症の診断・治療ガイドライン』およびその改訂版である『深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014』を発刊し,本邦における深在性真菌症の指針を提示したことにあると考えます.また,真菌症に関連した病態医学,医療を対象とした最新知見を活発に討論し続けております.本学としましては,相川直樹先生が2004年1月に第5回学術集会を東京・品川で開催されて以来,16年ぶりの担当となります.

 現在,真菌症診療の現場には,多剤耐性化,迅速診断など,多くの解決すべき課題があります.昨年の真菌症フォーラム2019の会長を務められました掛屋弘先生は,抗真菌薬適正使用(Antifungal Stewardship, AFS)をテーマに取り上げられました.この“stewardship”という単語は,“steward+ship”の造語で,“steward”は「家の管理人」,“ship”は「品質」という意味です.ここから,“stewardship”は「家の管理人が持っているべき品質」というニュアンスから,「預けられたものを責任もって管理すること,受託責任あるいは管理責任」と訳されています.Wikipediaには,「環境に関するstewardshipとは,天然資源が我々の世代のみならず未来世代のためにも,きちんと持続可能な形で管理されるようにすること」という説明がされています.すなわち,“stewardship”とは単に“適正使用”というだけではなく,「現世代のみならず未来世代まで,継続可能な形で管理する」という意味が付帯されていると考えるべきです.今回は,このような“stewardship”時代における真菌症診療について,基礎研究,診断,治療など多方面より議論できる場を提供したいと考えております.

 今年は夏に東京を中心に東京2020オリンピック・パラリンピック大会が開催され,終了後の熱気も冷めやらぬ11月の東京・浅草で,本フォーラムを開催致す予定でした.しかし,新型コロナウイルス感染症が世界情勢を一変させ,その影響で東京2020大会は延期となりました.当初より,東京2020大会開催前に東京での開催は困難であると判断し,例年の5月開催より半年遅れの11月に開催としており,ご迷惑をおかけすることになりましたが,その頃にはおそらく本邦における状況も持ち直していることを祈念し,予定通りに開催準備を進めて参ります.今回の会場を浅草ビューホテルとしましたのは,直前の11月27日(金)〜28日(土)に開催されます真菌症診療と関連の深い第33回日本外科感染症学会総会学術集会(会長:防衛医科大学校長 長谷和生先生)と同会場で行うことにより,本フォーラムへ多くの方々がご参加賜りたいとの願いも込めております.この場を借りまして,長谷先生はじめ日本外科感染症学会の関係各位にも御礼申し上げます.

 この学術集会が本フォーラム関係者ならびに真菌症の診療,研究に興味を有する多くの方々に有意義な機会となりますことを切に希望致しております.多数の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます.