ご挨拶
第35回日本外科感染症学会総会学術集会 開催のご挨拶
第35回日本外科感染症学会総会学術集会 会長 種本 和雄 川崎医科大学 心臓血管外科学 教授 |
「夜、爪を切ると親の死に目に会えない」とは昔から言われてきた俗信です。諸説ありますが、昔は明るい照明がないなかで、行燈のような暗い灯りの下、小刀で爪切りをして、怪我をして感染症にでも罹ったら、抗生物質のない時代に命を落とすこともあった訳で、避けられる怪我を負って早死にすることがないようにとの戒めとして広まったと言われています。これほどに人類と外傷・感染症の関係は、永く強いつながりをもって参りました。各種抗生物質や治療法などが普及した現代では、外傷による感染で命を落とすことは珍しくなってきましたが、依然として人類にとっては重要な課題です。また、各領域の外科治療が発達し、様々な手術が行われていますが、どの領域でも常に外科手術と感染は隣り合わせの問題で、避けては通れないテーマです。
本年、第35回日本外科感染症学会総会学術集会を私どもで主催させていただくにあたり、そのテーマを「大きく拡がる外科感染症学の翼」といたしました。本学会には、前身の日本外科感染症研究会の頃からずっとお世話になって参りました。消化器外科の先生方を中心に始められた研究会が、多くの領域・診療科の医師に拡大し、私ども心臓血管外科領域も遅ればせながら外科感染症学の末席に加えていただいております。また外科医だけでなく、多くの診療科の医師、歯科医師にその活動が拡がり、続いて薬剤師、栄養士、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師など様々な職種が集い議論する場となってきており、まさしく外科感染症学が「大きく翼を拡げている」という印象を持っております。今後もさらにその活動範囲を拡げて、この分野において大きな成果をあげていくことを確信し、このようなテーマといたしました。
新型コロナウイルス感染症蔓延が長く続いて、ほとんどの学会で久しく通常の対面開催が出来ておりませんが、本年11月にはコロナ禍が明けて通常開催が可能になるものと信じて準備を進めて参ります。今回、会場としております倉敷市芸文館は、倉敷美観地区に隣接した学会場で、学会の合間には美観地区の散策や大原美術館で世界の名画の鑑賞などをお楽しみいただけます。是非とも皆様で倉敷にお出かけくださいますようお願い申し上げます。