MRSAフォーラム2024

ご挨拶

 1977年にわが国で最初のMRSA感染症が確認されてからMRSAは80年代に入ると猛威を振るい瞬く間に全国の医療機関へ伝播拡大していきました。この間、抗MRSA薬としてバンコマイシンと国産初の薬剤であるアルベカシンが発売され、45年経った今ではこれらを含む4系統6薬剤を選択できるに至りました。しかしながら、わが国ではMRSA感染症により毎年600人前後の患者が命を落としており、ここ10年間、薬剤耐性菌による感染症の中では最も多い死亡者数となっています。

 この45年、MRSAを基礎の立場で振り返ると、薬剤感受性の表現系が大きく変わりました。80年~90年代の臨床分離株の約半数は、カルバペネム系やキノロン系、テトラサイクリン系に感受性を示しておりましたが、それ以降は多剤耐性化が進み、各薬剤の耐性機序に関する研究が進みました。その後β-lactam antibiotic induced vancomycin-resistant MRSA (BIVR)、ヘテロ耐性のsmall colony variants (SCVs)、community-acquired MRSA(CA-MRSA)やLivestock-associated MRSA (LA-MRSA) など、新たな特性を有する株が報告されました。一方、臨床面では薬物血中濃度モニタリング(TDM)を用いたテーラーメイド医療やPharmacokinetics-Pharmacodynamics (PK/PD)理論に基づく抗MRSA薬の処方設計などが、めざましい進歩を遂げました。これらの功績は多くの日本人研究者および医療者によって築き上げられてきましたが、その成果発表の場として、まさにこのMRSAフォーラムが一翼を担ってきたといえます。

 今回のMRSAフォーラム2024のテーマは「知の統合から臨床へ」でございます。基礎的研究があっての臨床という基本的なスタンスを再確認しつつ、新しい知見とご参加の皆様の知恵を結集して臨床へどう活かすかを考える1日にしたいと思っております。2024年には新しいMRSA感染症診療ガイドラインが公表される予定です。こうした話題も含め、本会がご参加の先生方にとって、有意義な情報交換の場となること期待しております。旧暦の七夕に是非、みちのく杜の都・仙台へご参集下さい。

MRSAフォーラム2024
当番世話人 藤村 茂
東北医科薬科大学大学院薬学研究科 臨床感染症学教室 教授

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