第72回日本輸血・細胞治療学会学術総会

第72回日本輸血・細胞治療学会学術総会

総会長挨拶

 第72回日本輸血・細胞治療学会学術総会を2024年5月30日(木)から6月1日(土)の3日間、京王プラザホテル新宿で開催いたします。新宿では第49回総会(2001年、池田康夫先生)、第59回総会(2011年、半田誠先生)、第63回総会(2013年、田所憲治先生)、第69回総会(2021年、田野﨑隆二先生)、第29回秋季シンポジウム(2021年、藤田浩先生)が実施されてきました。また当科の歴代教授(第1回総会・加藤勝治先生、第35回総会・福武勝博先生)も開催しており、縁のある学術集会を担当させていただくことは大きな栄誉であります。ご指導・ご協力をいただいた会員の皆様に心より感謝致します。

 総会企画委員会を石田明先生(埼玉医科大学国際医療センター)、牧野茂義先生(東京都赤十字血液センター)、嘉成孝志様(東京医科大学八王子医療センター)と共に立ち上げ、さらに国際委員会、学術委員会、理事運営委員会や関東甲信越支部の評議員の先生方にも多大なるご支援をいただきました。皆様のご協力により興味深いセッションを数多く準備できたことに改めて御礼申し上げます。

 今総会のテーマは「輸血・細胞治療のチーム医療推進~全ての患者に適切な輸血療法を~」としました。言うまでもなく、輸血医療では古くからチーム医療が実践されてきましたが、その必要性に大きなインパクトを与えたのはABO不適合輸血の実態調査結果(2000年)でした。そこから学会認定・臨床輸血看護師制度の発足(2010年)や「輸血チーム医療に関する指針」の提案(2017年)に至り、着実に安全性の向上が図られています。チーム医療は近年の医療安全での最も大切なキーワードですが、その元祖ともいえる本学会がさらに高い目標を掲げて推進することが革新的な輸血・細胞療法にも繋がると考えます。このテーマに沿って「コミュニケーションの改善からイノベーションへ」と題した、コミュニケーションの本質を掘り下げる企画を準備しました。

 特別講演のうち2つは国際委員会の津野寛和先生、佐藤智彦先生にご尽力いただき、次期ISBT会長であるPierre Tiberghien先生と米国での有力な輸血安全管理者であるNabiha Huq Saifee先生を招聘することができました。Dr. Pierreには欧州でのHemovigilanceとPatient Blood Managementへの取り組みについて、Dr. Nabihaには医療安全を高めるための多職種連携におけるTransfusion Safety Officerの役割についてお話いただく予定です。理化学研究所の高橋恒一先生には人型ロボット「まほろ」と人工知能を組み合わせた再生医療の未来像、東京大学医科学研究所の山﨑聡先生には新たな組成の培地によるヒト造血幹細胞の増幅技術についてご講演いただくことになっています。さらに武蔵野美術大学の更科功先生には「ジュラシック・パークの夢」と題した生命の進化に関する新たな知見の解説をお願いしています。

 シンポジウム、パネルディスカッションは最新の輸血・細胞療法や各職種でのトピックスを中心になるべく会員の皆様のご要望に沿う企画としました。I&A30 年の歩みと今後の展望、大量出血症例での新規血液製剤の可能性、適正輸血を推進するための tips、検査技師リフレッシャーコース、アフェレーシスナースのインシデント事例共有、細胞治療やCAR-Tの新展開など興味深い企画が揃っています。今回は多職種連携や医療連携を意識したプログラムが多いことも特徴の一つです。また、宮田茂樹先生と長井一浩先生にお世話いただき、台湾輸血学会に加えて韓国輸血学会の代表者をお招きして「Hemovigilance in Asia」のセッションを設けました。日本からは加藤栄史先生にご登壇いただき、アジアでの交流拡大の礎にできればと考えています。

 昨年に続き、一般演題の中から最優秀演題賞候補を7演題選択致しました。演者の所属は日赤事業本部2名、日赤ブロック血液センター2名、中核病院2名、大学病院1名であり、基礎から臨床まで多様な研究成果を堪能できると思います。最終日午前中の発表を審査させていただき、閉会式で最優秀演題の表彰を行う予定です。

 ウイズコロナの時代に見合うような形式で会員懇親会も予定しています。全国の銘酒を取り寄せ、景品が当たる楽しい企画も準備していますのでふるってご参加ください。

 会員の皆様の知的好奇心を刺激するようなプログラムが目白押しですので、ぜひ多くの方に現地に足を運んでいただきたいと存じます。熱い議論と交流ができることを心よりお待ちしています。

第72回日本輸血・細胞治療学会学術総会 総会長
田中 朝志
東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学科・輸血部

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